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名古屋地方裁判所 平成3年(ワ)2834号 判決 1993年2月17日

愛知県江南市野白町葭場五七番地

原告(反訴被告)(以下「原告」という。)

株式会社有宏社

右代表者代表取締役

多和田茂裕

右訴訟代理人弁護士

家田安啓

右輔佐人弁理士

後藤憲秋

吉田吏規夫

愛知県春日井市下条町一丁目一一番地の一四

被告(以下「被告会社」という。)

エヌ・ディ・シー株式会社

右代表者代表取締役

永井利和

愛知県蒲郡市水竹町下島八二番地

被告(反訴原告)(以下「被告永井」という。)

永井利和

右両名訴訟代理人弁護士

野田弘明

右輔佐人弁理士

西山聞一

主文

一  被告らは原告に対し、連帯して金一五〇万円及びこれに対する平成三年九月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告の製造販売する別紙イ号物件目録記載の段ボール芯材が、被告永井の有する登録番号一四八八四一四号の実用新案権を侵害している旨及び原告の実施する別紙ロ号製法目録記載の方法の実施が、同被告の有する登録番号一〇八二三二八号の特許権を侵害している旨を第三者に陳述、流布してはならない。

三  原告と被告永井との間において、同被告が、別紙イ号物件目録記載の段ボール芯材について、登録番号一四八八四一四号の実用新案権に基づく差止請求権を有しないこと及び別紙ロ号製法目録記載の方法について、登録番号一〇八二三二八号の特許権に基づく差止請求権を有しないことを確認する。

四  原告のその余の請求及び被告永井の反訴請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、原告と被告会社との間においてはこれを三分し、その二を原告の負担、その余を被告会社の負担とし、原告と被告永井との間においては本訴反訴を通じてこれを三分し、その一を原告の負担、その余を同被告の負担とする。

六  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  申立て

一  原告(本訴)

1  被告らは原告に対し、連帯して金五〇〇万円及びこれに対する平成三年九月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  主文第二、三項と同旨。

3  第1項につき仮執行宣言

二  被告永井(反訴)

1  原告は、別紙ロ号製法目録記載の方法(以下「ロ号製法」という。)を使用してはならず、また、別紙イ号物件目録記載の段ボール芯材(以下「イ号物件」という。)を製造、販売してはならない。

2  原告は、その本店、営業所及び工場に存するイ号物件(完成品)並びにその半製品及び仕掛品を廃棄し、同物件の製造設備を除却せよ。

3  原告は、被告永井に対し、金四八〇万円及びこれに対する平成四年三月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  仮執行宣言

第二  事案の概要

本件は、原告が、特許権及び実用新案権を有する被告永井及び同被告が代表者をしている被告会社に対し、不正競争防止法一条一項六号による差止、同法一条の二又は民法四四条一項、七〇九条による損害賠償及び遅延損害金の支払並びに被告永井に対し、右各権利に基づく差止請求権の不存在確認を求め、反訴として、被告永井が原告に対し、右特許権侵害をを理由とする差止等並びに損害賠償及び遅延損害金の支払を請求した事案である。

一  争いのない事実

1  当事者

(一) 原告は、段ボール芯材などを含む各種段ボールの加工、製造、販売を業とする株式会社である。

(二) 被告会社は主として段ボール芯材の製造販売を業とする株式会社であり、被告永井は被告会社の代表者である。

2  本件特許権

(一) 被告永井は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)を有している。

登録番号 第一〇八二三二八号

名称 ペーパーコアによる芯材の製造方法

出願日 昭和五二年七月九日

出願公告日 昭和五六年五月一六日

登録日 昭和五七年一月二九日

特許請求の範囲

本件特許請求の範囲は、別紙(一)の特許公報(甲二。以下「本件公報(一)」という。)の該当欄記載のとおりである。

(二) 本件発明の構成要件

本件発明は次の構成要件からなるものである。

(第一項)

A クラフト紙等の丈夫な紙を一定寸法の方形状に切断してペーパーコア用シートを多数枚形成せしめる第一工程と、

B 該ペーパーコア用シートに一定間隔の平行なミシン目を刻設せしめる第二工程と、

C<1> 第一枚目のペーパーコア用シートの多数本のミシン目のうち一本置きのミシン目の一側に糊代部を形成すると共に該糊代部に接着剤を塗布し、

<2> 第二枚目のペーパーコア用シートの多数本のミシン目のうち一本置きのミシン目を第一枚目のペーパーコア用シートの糊代部側のミシン目に対して糊代部の幅の分だけ一側かつ平行に位置をずらして第二枚目のペーパーコア用シートの裏面を第一枚目のペーパーコア用シートの糊代部に接着し、

<3> 以下同様に第三枚目以上の各ペーパーコア用シートを下方のペーパーコア用シートの糊代部に接着して多層のペーパーコア用シートを形成せしめる

第三工程と、

D 該ペーパーコア用シートを上方より押圧して接着力の安定を図る第四工程

E より成ることを特徴とするペーパーコアによる芯材の製造方法。

(第二項)

F 特許請求の範囲第一項において、多数枚のペーパーコア用シートを接着させた後、一定の幅によりペーパーコア用シートのミシン目と直角方向に切断せしめる

G 様にしたことを特徴とするペーパーコアによる芯材の製造方法。

(三) 本件公報(一)に記載された本件発明の目的と作用効果

(1) 目的

本件発明の目的は、方形のコアを連続的に成形することにより、伸張させた際、応力を与えない限り復元しない芯材を得ることにある。本件発明の第二の目的は、取扱が簡単でかつ抗圧性に秀れ、軽量な芯材を得ることにある。

(2) 作用効果

従来の六角形のハニカム構造紙は伸縮自在ではあるが、使用時に伸張させたとき、両端を支持させ引っ張っていない限り縮小し、六角形のコアは復元し板状になるため、例えば建築用パネルの芯材として使用するとき甚だ厄介であって、予め伸張状態に保持させるため蒸気を与えたりして、使用するに先立って前処理をせざるを得なかった。しかるに本件発明による芯材は、菱形状のコアが形成され、伸張させた後両端を支持したり、あるいは蒸気を与えた後乾燥させたりする前処理を一切必要としない。すなわち、伸張させた場合は、応力を与えない限り、菱形状のコアは板状に復元しない。したがって、建築用パネル等の芯材として使用する場合は、単に芯材を伸張させるだけで楽に使用できる。この種の芯材は、伸縮自在なものが製造されているが、何れも伸張させた後自然的に復元するため、このことが使用上の大きな隘路となっていたが、本件発明は、上記の通り応力を与えない限り自然的に復元しないため、使用上の利点は甚だ大きい。その上、製造方法は、折目と糊代部を設けたシートに他のシートを接着させるだけでよいから楽に実施でき、また、従来品に比較して、抗圧力、重量についそれぞれ何らの見劣りもない。

3  本件実用新案権

(一) 被告永井は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。

登録番号 第一四八八四一四号

名称 方形素材

出願日 昭和五三年三月二五日

出願公告日 昭和五七年九月三日

登録日 昭和五八年五月一七日

実用新案登録請求の範囲

本件実用新案登録請求の範囲は、別紙(二)の実用新案公報(甲四。以下「本件公報(二)」という。)の該当欄記載のとおりである。

(二) 本件考案の構成要件

A 紙質等の適宜材質により成る単体の素材を連結する山形に形成せしめ、

B かかる単体の素材を平行に左右位置をずらせて一辺にて溶接あるいは接着して成る方形素材において、

C 各単体の折目にはミシン穴を多数設け、

D 一本置きの折目の一側に任意の一定幅を有する糊代部を形成すると共に

E 各単体を糊代部の幅だけずらして接着し、

F 又方形素材の空間部には保温剤を充填せしめた

G ことを特徴とする方形素材。

4  原告の行為

原告は、遅くとも平成元年七月一日から現在まで、業としてロ号製法を使用してイ号物件を製造しこれを販売している。

5  被告らの行為

(一) 被告らは、平成二年八月一八日ころ到達の内容証明郵便をもって、原告がイ号物件を納入した相手方であるアオキ木工所に対して、これが本件特許権及び本件実用新案権を侵害している旨の通告をした。

(二) 被告永井は、平成三年八月一九日ころ到達の内容証明郵便をもって、原告がイ号物件を納入した相手方である株式会社ヤマザキ技販及び同物件のユーザーである株式会社福本屋家具製作所に対し、原告が本件特許権及び本件実用新案権を侵害している旨の警告をした。

6  確認の利益

被告らは、ロ号製法が本件発明の、イ号物件が本件考案の各技術的範囲に属している旨主張しており、また、被告永井は、平成二年四月二〇日ころ到達の内容証明郵便をもって、原告に対し、イ号物件が本件特許権及び本件実用新案権の技術的範囲に属するとして、その製造の中止を求めた。

二  争点に関する当事者の主張

1  ロ号製法は本件発明の技術的範囲に属するか否か(反訴、本訴)。

(一) 被告ら

(1) ロ号製法の分説

ロ号製法を分説すると次のとおりである。

a (第一工程)段ボールシートの形成

一定の横幅を有する段ボール紙よりなる方形状の段ボールシートを多数枚形成すること。

b (第二工程)スリットの形成

段ボールシートの上下両面(表裏面)に等間隔において交互に所定の幅にスリットを形成すること。

c (第三工程)多層の段ボールシート(芯材)の形成

<1> 段ボールシートのスリットの一側にのり付け部を形成すると共にのり付け部に「のり」を塗布すること。

<2> 第二枚目のスリットを形成した段ボールシートを第一枚目の段ボールシートの前後を変えて並べて両者を接着すること。

<3> 以下、<1>、<2>と同様に第三枚目以上の各段ボールシートを下方の段ボールシートののり付け部に接着して多層の段ボールシートを形成すること。

d (第四工程)接着力の安定化

段ボールシートを上方より押圧して接着力の安定を図ること。

e 以上の四工程よりなる段ボール芯材の製造方法。

f (切断工程)所定高さの芯材の形成

多数枚の段ボールシートを接着させた後、一定の幅により段ボールシートのスリットと直角方向に切断すること。

g 以上よりなる段ボール芯材の製造方法。

(2) ロ号製法の作用効果

ロ号製法によって得られる芯材は、<1>確実に折目を付けることができ、しかも、<2>応力を与えない限り、折り曲げに対して板状に復元することがないという作用効果を有している。

(3) 構成要件の対比

次のとおり、ロ号製法は、本件発明の構成要件AないしGをすべて充足する。

<1> ロ号製法は段ボール紙を用いているが、これはクラフト紙等からなるものであるからAとaは同一である。

<2> ミシン目もスリットも原紙の折り曲げを容易にする技術であり、ロ号製法のスリットはミシン目に対応しその一種であるといってよいもので、公知技術の構成を形状、配列につき変更したものであって、当業者にとってその変更に困難性がなく、また、その変更によってもたらされる効果も普通に予測される効果を超えるものではないから実質的に同一であり、bはBを充足する。

<3> 本件発明の構成要件C<2>は、第二枚目のペーパーコア用シートを第一枚目のペーパーコア用シートに対して前後を変えて並べて接着すること、あるいは第二枚目を裏返して並べて両者を接着することに他ならないから、cはCを充足する。

<4> Dとd、Eとe、Fとf、Gとgはいずれも同一である。

(4) 作用効果の対比

ロ号製法の作用効果のうち、前記(2)<2>は本件発明の作用効果と同一であり、同<1>はスリットによる効果であるが、本件発明のミシン目からも同一の作用効果がもたらされるので、ロ号製法の作用効果は本件発明の作用効果と同一である。

(5) 以上のとおりであるから、ロ号製法は本件発明の技術的範囲に属する。

(二) 原告

次のとおり、ロ号製法は本件発明の技術的範囲に属しない。

(1) 本件発明に使用される原紙は「クラフト紙等の丈夫な紙」であって、「クラフト紙等の」という明確な例示がなされているように、通常一般のシート状の紙を指すものであって、上下の平面状の平板紙の間に波板紙を挟み込んで一体化した「段ボール紙」を含まない。

(2) 前項記載のように、「クラフト紙等の丈夫な紙」は通常一般のシート状の紙を指すが、シート状物に折目をつけるための手段としては「ミシン目」が一般的であって、その「表裏面に断続的なスリット」を形成することは通常の技術常識では考えられない。

仮に、表裏面にスリットを形成するとしても、シート状物の「表裏面に交互に」スリットを形成することはない。

三層構造をなす段ボール紙は、剛性が数段高く折り曲げがきわめて困難であり、確実な折目を付けるためには、折り曲げの「山部」となる板紙面側に「スリット」を形成することが有効であるところ、段ボールのような厚みのある嵩高な面状物にミシン目を付けることは、技術的にも容易ではなく、また折り曲げに大きな力を要し、折り曲げ部の外観状態が汚くなり、折り曲げ形状の保持が悪いなどの作業上の問題がある。

したがって、紙にミシン目を刻設することと、段ボール紙の一方に表裏面に交互に断続的スリットを形成することとは異なった技術であり、bはBを充足しない。

(3) ロ号製法では、第一枚目の原紙に第二枚目の原紙をのり付けするに際して、原紙の前後を交互に変え、交互に左右のガイドに案内させて行うもの、すなわち原紙の左右が逆になることを意味するのであり、第一枚目の原紙に対して第二枚目の原紙を平行に位置をずらしたものではなく、cはCを充足しない。

2  イ号物件は本件考案の技術的範囲に属しないか(本訴)。

(一) 原告

イ号物件は、本件考案の構成要件C及びFを充足しないので、本件考案の技術的範囲に属しない。

(二) 被告ら

争う。

3  被告らの行為の有無(本訴)

(一) 原告

被告らは、前記一5の行為のほか、平成三年五月ころ、被告会社の販売代理店である広島県福山市所在のシンコー株式会社を通じて、イ号物件のユーザーに対し、同物件の使用は本件特許権の侵害になる旨を触れて回って、競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を陳述、流布している。

(二) 被告ら

否認する。

4  被告らの過失の有無(本訴)

(一) 原告

ロ号製法が本件特許権の技術的範囲に属するものではなく、また、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するものでないことは、一見して明らかであるところ、原告は、被告永井から製造中止を求めてきた後間もなく、非侵害である旨の弁理士作成の鑑定書を被告らに送付しているのであるから、被告らは非侵害であることを十分認識した上で前記の行為を行ったものである。

(二) 被告ら

原告が弁理士作成の鑑定書を原告主張の時期に送付してきたことを認め、その余は争う。

5  原告の損害額如何(本訴)

(一) 原告

被告らの前記行為は、競争関係にある原告の営業上の信用を著しく毀損する行為であり、原告の損害は、金銭に見積もって五〇〇万円を下ることはない。

(二) 被告ら

争う。

6  被告永井の損害額如何(反訴)

(一) 被告永井

原告は、イ号物件を製造販売し、平成元年七月一日からでも毎月三〇〇万円以上の売上高を有しているところ、その利益率は控え目に見ても五パーセントは下らないから、同日から平成四年二月二八日までの間に四八〇万円以上の利益を得たこととなり、被告永井は右同額の損害を被った。

(二) 原告

争う。

第三  争点に対する判断

一  ロ号製法は本件発明の技術的範囲に属するか(本訴、反訴)。

まず、ロ号製法が本件発明の構成要件Bを充足するか否かについて検討する。

本件発明の構成要件Bにいう「ミシン目」とは、一般に、紙の切り取り線などにつける細かい穴の列(大辞林)、点線状の孔(広辞苑第四版)を意味し、一方、「スリット」とは、一般に、細長い隙間(大辞林)、細い隙間(広辞苑第四版)を意味する。そして、本件発明の詳細な説明には、本件発明の作用効果として前記第二の一2(三)(2)のような記載があるだけで、ミシン目の形成とロ号製法の表裏面のスリットの形成との差異については何ら触れられていないところ、証拠(甲二、乙一の一、二)及び弁論の全趣旨によれば、<1> 本件発明の「ミシン目」については、本件発明の詳細な説明にも、これがクラフト紙等を貫通しないでその厚みの半分程度にとどまるもの(ハーフカット)で、表面及び裏面に、表面のそれと裏面のそれとが重なり合わないよう交互に刻設されたものであることを窺わせる記載はないこと、<2> ロ号製法の分説bにいう「スリット」は、段ボール紙よりなる原紙の表面及び裏面(上下両面)に、所定の間隔で、表面のそれと裏面のそれとが重なり合わないよう交互に、右原紙の厚みのほぼ半分程度の深さに刻設(ハーフカット)された、一直線の断続的な切込みをいうものであり、表面から裏面に貫通するものではないこと、<3> クラフト紙等の丈夫な紙に折目を付けるための手段としては、各折目の内側と外側に交互に切断部を形成せしめるものに比して、折目の形成が著しく容易であると共に各折目において内側、外側のいずれにも自在に折曲することができる利点があることから、ミシン目を刻設するのが一般的であって、表面及び裏面に交互に断続的なスリットを形成することは、通常の技術的常識では考えられないこと、<4> ロ号製法における原紙は、上下の平面状の平板紙を挟み込んで一体化した三層構造の段ボール紙であって、一層構造のシート状の紙に比べて折り曲げることが極めて困難であること、<5> 右のような段ボール紙に確実な折目を付けるためには、折り曲げの山部となる面側にスリットを形成するのが有効であるが、ミシン目を刻設した場合には、折り曲げの山部の強度が大きいので、折り曲げに大きな力を要するばかりか、折り曲げ部が無理やり破壊されるので、外観状態が汚く、かつ、折り曲げ形状の保持が極めて悪く、容易に復元してしまうという作業上の問題点があること、以上の事実が認められる。

右の事実によれば、ロ号製法の「スリット」と本件発明の構成要件Bにいう「ミシン目」とは、その形態が異なるのはもとより、その作用効果の点においても著しい差異が生ずるのであるから、右「スリット」は右「ミシン目」には当たらないと解するのが相当である。原告は、「スリット」は「ミシン目」の一種であり、その効果も普通に予測される効果を超えるものでないなどとして、両者は実質的に同一であると主張するが、採用することができない。

以上に述べたところによれば、ロ号製法は本件発明の技術的範囲に属しないと解するのが相当である。

二  イ号物件は本件考案の技術的範囲に属するか(本訴)。

1  本件考案の構成要件Cは、各単体の折目には「ミシン穴」を多数設けることとしており、イ号物件においては、複数の素材単片の表裏面に交互に「スリット」が形成されている。しかし、右一に述べたのと同様の理由のほか、本件考案の詳細な説明には、「各単体1の折目4にはミシン穴を多数設けたので、各折目において内側と外側に交互に切断部を形成せしめるものに比し折目4の形成が著しく容易であると共に各折目4において内側、外側いずれにも自在に折曲出来」る(本件公報(二)4欄三ないし八行)と記載されていること、すなわち、本件考案の従来例としてイ号物件のように表裏面に交互にスリットを形成したものを挙げた上、本件考案はミシン目の形成により従来例にはない効果を奏すると明言していることに照らすと、本件考案の「ミシン穴」とイ号物件の「スリット」とは異なるものであるというべきである。

2  本件考案の構成要件Fは、「方形素材の空間部には保温剤を充填」することとしているところ、本件考案の詳細な説明には、「方形素材の空間部には保温材を充填せしめたので、耐荷、緩衝効果に加えて保温効果をも図らしめることが出来る等その実用的効果甚だ大なるものである。」(同4欄一四ないし一七行)と記載されていることからしても、素材空間部に保温材を充填していないものは、本件考案の技術的範囲に属しないことが明らかであるところ、イ号物件の構成自体に照らして、これが右の要件を欠くことは明らかである。

3  したがって、イ号物件は本件考案の技術的範囲には属しないというべきである。

三  被告らの行為の有無について(本訴)

1  本件全証拠によっても、被告らがシンコー株式会社を通じて、イ号物件の使用が本件特許権の侵害になる旨触れて回ったとの事実を認めることはできない。

2(一)  前記第二の二1の事実並びに原告及び被告会社の所在地からすれば、原告と被告会社とは競争関係にあるものと認めることができる。

(二)  そして、被告らが原告の納入先及びユーザーに対して内容証明郵便で各警告を行ったことは、第二の一5記載のとおりであるところ、右一及び二に述べたとおり、イ号物件及びロ号製法はいずれも本件実用新案権及び本件特許権を侵害しないのであるから、被告らの右各行為は、不正競争防止法一条一項六号に規定する他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の陳述、流布に当たるというべきである。なお、被告永井が被告会社の代表取締役であることからすれば、被告永井名義でされた警告書も、被告会社のためにもされたものと評価するのが相当であり、被告会社は右の警告の全部について、不正競争防止法一条一項六号、一条の二の責任を負うというべきである。

3  また、被告永井は、被告会社の代表者であって、同会社の代表者として又は同社のために前記の行為をしたものと認められるのであるから、不正競争防止法一条一項六号に基づく差止請求は同被告に対してもなし得るものと解するのが相当であり、さらに、同被告は、前記行為を個人としてもしているのであるから、同被告に故意又は過失が認められる場合には、同法一条の二に基づく損害賠償義務を負うか否かはともかくとして、民法七〇九条に基づく損害賠償義務を負い、右義務は被告会社の義務と不真正連帯の関係に立つものというべきである。

四  被告らの過失の有無について(本訴)

(一)  相手方と競争関係にある者が相手方の納入先やユーザーに対し特許権ないし実用新案権侵害の警告行為を行うに当たっては、特許権ないし実用新案権侵害の事実の有無の判断が専門的知識を伴う法的判断であって、しかも警告行為が相手方の営業に重大な影響を与えるものであることに鑑み、当該特許権ないし実用新案権の技術的範囲、相手方の製品・製法等との対比を慎重にするなど、侵害の有無を事前に十分に調査、検討した上で行うべき義務があるというべきである。

(二)  これを本件についてみるに、被告らの警告行為前に原告から被告会社に鑑定書が送付されたことは当事者間に争いがなく、前記一及び二の認定、判断並びに証拠(甲七、一四、証人多和田昌二)及び弁論の全趣旨によれば、次のとおり認定、判断することができる。

(1) 右鑑定書(甲一四)は、原告が、被告永井の代理人たる弁理士から内容証明郵便によって警告を受けた際、非侵害との見解であるならそれについての専門家による回答をするよう求められたことに応じて、原告が送付したものである。

(2) 右鑑定書には、非侵害の理由として、充足しない構成要件についての判断が記載ざれ(結論については前記一及び二とほぼ同様である。)、別紙として、原告製品のリーフレット(ちらし広告)のほか本件公報(一)及び(二)が添付されている。

(3) 本件考案とイ号物件を対比すれば、イ号物件には保温剤の充填がないので、非侵害であるとの判断は容易になしうるものであり、また、本件発明とロ号製法の対比においても、原告により非侵害との指摘がなされているのであるから、事前の調査検討を行えば、前記一の点で非侵害と解される余地が高いものであることを十分予測することができたものである。

(4) 被告らは、右鑑定書が送付されても、これに対して特段の反論書等を原告側に送付していない。

(5) 原告の納入先やユーザーに対する警告書の送付は、弁理士を代理人として送付されているものである。

以上の事実が認められ、これを左右するに足りる証拠はない。右事実によれば、右各警告は専門家である弁理士が関与しその意見に基づいてなされたものと認められるけれども、専門家の意見を徴していたことから直ちに前記注意義務を尽くしたということはできない。むしろ、本件においては、本件特許権又は実用新案権侵害の有無についての予測の可能性及びその程度(右(3))、鑑定書の送付経緯と右送付後に被告らが特段の対応をした形跡が窺われないこと(右(1)(2)(4))等に照らせば、その注意義務を十分尽くさぬまま前記各警告行為に及んだものと認めるのが相当である。したがって、被告らには虚偽の事実の陳述、流布について、少なくとも過失があったものというべきである。

五  原告の損害について(本訴)

証拠(甲一五、証人多和田昌二)及び弁論の全趣旨によれば、被告らの前記行為により、原告は取引先からの取引の中止や注文のキャンセル、顧客開拓に際しての障害等の影響を受けたことが認められ、この事実によれば、被告らの行為によって、原告が、単に取引中止等の経済的損害にとどまらず、営業上の信用、名誉を毀損されて無形の損害を被ったものと推認される。そして、前記の被告らの行為の内容、信用毀損についての予測可能性、本件各警告行為を行うまでの経緯、警告の内容等の事情を総合すると、原告の被った無形損害を金銭に換算すると一五〇万円と評価するのが相当である。

六  結論

以上に述べたところによれば、原告の本訴請求は、損害賠償請求のうち被告らに対し連帯して一五〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成三年九月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分並びに被告らに対する虚偽事実の陳述、流布行為の差止請求及び被告永井に対する差止請求権不存在の確認請求は正当であるからこれを認容し、原告のその余の請求及び被告永井の反訴請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 瀬戸正義 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)

別紙(一)

<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭56-20981

<51>Int.Cl.3B 31 D 3/02 //B 32 B 3/12 E 04 C 2/36 識別記号 庁内整理番号 7724-3E 6358-4F 6838-2E <24><44>公告 昭和56年(1981)5月16日

発明の数 1

特許第1082328号

<54>ペーパーコアによる芯材の製造方法

<21>特願 昭52-82353

<22>出願 昭52(1977)7月9日

公開 昭54-17983

<43>昭54(1979)2月9日

<72>発明者 永井忠夫

愛知県額田郡幸田町大字上六栗字金ヶ崎90番地

<71>出願人 永井利和

蒲郡市水竹町下り島82

<74>代理人 弁理士 西山聞一

<56>引用文献

実公 昭37-21591(JP、Y1)

<57>特許請求の範囲

1 クラフト紙等の丈夫な紙を一定寸法の方形状に切断してペーパーコア用シートを多数枚形成せしめる第一工程と、該ペーパーコア用シートに一定間隔の平行なミシン目を刻設せしめる第二工程と、第1枚目のペーパーコア用シートの多数本のミシン目のうち一本置きのミシン目の一側に糊代部を形成すると共に該糊代部に接着剤を塗布し、第2枚目のペーパーコア用シートの多数本のミシン目のうち一本置きのミシン目を第1枚目のペーパーコア用シートの糊代部側のミシン目に対して糊代部の幅の分だけ一側かつ平行に位置をずらして第2枚目のペーパーコア用シートの裏面を第1枚目のペーパーコア用シートの糊代部に接着し、以下同様に第3枚目以上の各ペーパーコア用シートを下方のペーパーコア用シートの糊代部に接着して多層のペーパーコア用シートを形成せしめる第3工程と、該ペーパーコア用シートを上方より押圧して接着力の安定を図る第4工程より成ることを特徴とするペーパーコアによる芯材の製造方法。

2 特許請求の範囲第1項において、多数枚のペーパーコア用シートを接着させた後、一定の幅によりペーパーコア用シートのミシン目と直角方向に切断せしめる様にしたことを特徴とするペーパーコアによる芯材の製造方法。

発明の詳細な説明

本発明はペーパーコアによる芯材の製造方法に関する。

本発明の目的は方法のニアを連続的に成形することにより、伸張させた際応力を与えない限り復元しない芯材を得ることにある。

本発明の第2の目的は取扱いが簡単でかつ抗圧性に秀れ、軽量な芯材を得ることにある。

以下本発明の詳細を添付図面を参照して説明する。

ペーパーコア用シート1として、クラフト紙等の丈夫な方形の紙を多数枚用意する。このシート1の長さは芯材の長さにほぼ等しいものであり、シート1の幅は使用時において芯材の高さを決定する。これらのシート1には一定の間隔により平行な折目2を多数本設ける。この折目2には折目2が確実にかつ成形し易くするためミシン穴を多数設けることがよい。そして多数本の折目2のうち1本置きの折目2の一側にその折目2に沿つて一定の幅による糊代部3を形成してなるペーパーコア用シート1の多数枚を設ける。次にこれらのペーパーコア用シート1の多数枚のうち第2図に示すようにその第1枚目のペーパーコア用シート1aの糊代部3に接着剤を塗布し、第2枚目のペーパーコア用シート1bの多数本の折目2のうち1本置きの折目2を第1枚目のペーパーコア用シート1aの糊代部3側の折目2に対して糊代部3の幅の分だけ一側(図面上有側)にかつ平行に位置をずらして第2枚目のペーパーコア用シート1bの裏面を第1枚目のペーパーコア用シート1aの糊代部3に接着する。以下上記の工程を反復して第3枚目以下のペーパーコア用シート1を順次積重さね接着させる。その要領は第1枚目のペーパーコア用シート1aに接着させた第2枚目のペーパーコア用シート1bの表面における糊代部3に接着剤を塗布し、ついで第4枚目のペーパーコア用シート1dを上記の第2枚目のペーパーコア用シート1bを第1枚目のペーパーコア用シート1aに接着させた場合と同様に多数本の折目3のうち1本置きの折目2を第3枚目のペーパーコア用シート1cの糊代部3側の折目2に対して糊代部3の幅の分だけ一側かつ平行に位置をずらして第4枚目のペーパーコア用シート1dの裏面を第3枚目のペーパーコア シート1cの糊代部3に接着する。以上で四段のコアを有する芯材が得られるが必要により第5枚目以下のペーパーコア用シート1をその下方に位置するペーパーコア用シート1に接着する。この場合ペーパーコア用シート1の幅を予じめに使用時に備えて一定の幅に設けておけば必らずしも必要とする工程ではないが製造上の便宜上幅1mのシート1を多数枚接着させた後幅20mm(使用時には20mmの高さとなる)の芯材を得る場合は、接着させた多数枚のペーパーコア用シート1を20mmの幅によりペーパーコア用シート1の折目2と直角方向に第2図矢印のように切断することにより20mm幅の芯材が得られる。

なお上記の工程にかいてシート1の折目2と折目2を糊代部3の幅だけずらして接着するには、第1枚目ペーパーコア用シート1aに対して第2枚目のペーパーコア用シート1bを裏返して引揃えた上接着しさえすればよい。従来の六角形のハニカム構造紙は伸縮自在ではあるが、使用時に伸張させたとき両端を支持させ引張つていない限り縮少し六角形のコアは復元し板状になるため例えば建築用パネルの芯材として使用するとき甚だ厄介であつて予じめ伸張状態に保持させるため蒸気を与えたりして使前するに先立つて前処理をせざるを得なかつた。しかるに本発明による芯材は菱形状のコアが形成され、伸張させた後両端を支持したり、あるいは蒸気を与えた後乾燥させたりする前処理を一切必要としない。即ち伸張させた場合は応力を与えない限り菱形状のコアは板状に復元しない。従つて建築用パネル等の芯材として使用する場合は単に芯材を伸張させるだけで楽に使用できる。この種の芯材は伸縮自在なものが製造されているが、何れも伸張させた後自然的に復元するためこのことが使用上の大きな陰路となつていたが、本発明は上記の通り応力を与えない限り自然的に復元しないため使用上の利点は甚だ大きい。その上製造方法は折目と糊代部を設けたシートに他のシートを接着させるだけでよいから楽に実施でき、また従来品に比較的して抗圧力、重量について夫々何んらの見劣りもない。

図面の簡単な説明

第1図はペーパーコア用シートの正面図、第2図は4枚のペーパーコア用シートを接着させ、各ペーパーコア用シートの一部を破断して示す正面図、第3図は接着させたペーパーコア用シートの平面図、第4図は本発明による芯材を伸張させた状態を示す平面図である。

主要部分の符号の説明 1……ペーパーコア用シート、2……折目、3……糊代部。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

別紙(二)

<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告

<12>実用新案公報(Y2) 昭57-40221

<51>Int.Cl.3B 32 B 3/12 3/26 //E 04 C 2/42 識別記号 庁内整理番号 6122-4F 6122-4F 6838-2E <24><44>公告 昭和57年(1982)9月3日

登録第1488414号

<54>方形素材

<21>実願 昭53-38293

<22>出願 昭53(1978)3月25日

<65>公開 昭54-141113

<43>昭54(1979)10月1日

<72>考案者 永井忠夫

愛知県額田郡幸田町大字上六栗字金ケ崎90番地

<71>出願人 永井利和

蒲郡市水竹町下り島82

<74>代理人 弁理士 西山聞一

<56>引用文献

特開 昭54-93087(JP、A)

<57>実用新案登録請求の範囲

紙質等の適宜材質より成る単体の素材を連続する山形に形成せしめ、かかる単体の素材を平行に左右位置をずらせて一辺にて溶接あるいは接着して成る方形素材において、各単体の折目にはミシン穴を多数設け、一本置きの折目の一側に任意の一定幅を有する糊代部を形成すると共に各単体を糊代部の幅だけずらして接着し、又方形素材の空間部には保温剤を充填せしめたことを特徴とする方形素材.

考案の詳細な説明

本考案は鉄鋼、合成樹脂、紙質等の適宜材質より成る単体の素材を連続する山形に形成せしめ、かかる単体の素材を平行に左右位置をずらせて一辺にて溶接あるいは接着することにより方形の素材としてU字溝、U字溝蓋、側溝蓋、横断溝蓋、集中ます蓋、路面覆工板、手摺、分離帯、間仕切り、鉄筋コンクリート内の補強材等として使用可能せしめると共に、左右端に板を溶接あるいは接着することにより襖、ドア等として使用可能ならしめ、又空間部に保温材を充填することにより量等に使用可能ならしめた方形素材に関するものである.

即ち、例えばペーパーコアにより本考案に係る方形素材を形成するには、一定の間隔により平行な折目を多数本設け、多数本の折目のうち一体置きの折目の一側に折目に沿つて糊代部を形成してなるペーパーコア用シートを多数枚設け、第1枚目のペーパーコア用シートの糊代部に接着剤を塗布し、第2枚目のペーパーコア用シートの多数本の折目のうち1本置きの折目を第1枚目のペーパーコア用シートの糊代部側の折目に対して糊代部の幅の分だけ一側にかつ平行に位置をずらせて第2枚目のペーパーコア用シートの裏面を第1枚目のペーパーコア用シートの糊代部に接着し、以下上記の工程により第3枚目以上の各ペーパーコア用シートを下方のペーパーコア用シートの糊代部に接着せしめ、鉄鋼、合成樹脂にて本考案に係る方形素材を形成するには略菱形のマス目を連続的に形成する様に、又一辺にて溶接あるいは接着することにより形成せんとするものである.

以下本考案実施の一例を図面に基いて説明すると、第1図は鉄鋼、合成樹脂にて方形素材が形成された場合を示し、連続する山形の単体1を一体的に成形せしめ、かかる多数本の単体1を平行的に置かしめて一本置きに山部2、2'……の位置を垂直線上にさせ、かかる一本置きに形成した単体1、1'間に斜辺3の略2分の1を溶接あるいは接着させ、かかる様に連続して単体を上下方向に形成せしめれば略菱形のマス目が規則的になされて強度性大なる方形素材が形成されるのである.

ペーパーコア用シートにて本考案に係る方形素材を形成するには、一定の間隔にて平行な折目4を多数本設け、かかる折目4には折目2が確実かつ成形し易くするためにミシン穴を多数設けるのが良く、多数本の折目4のうち一本置きの折目4の一側にその折目4に沿つて一定の幅によう糊代部5を形成してなるペーパーコア用シートの多数枚を設ける.尚糊代部5の幅は折目4間の幅に対し特定比率のものに限定されない.

次にこれらのペーパーコア用シートの多数枚のうち第3図に示す様にその第1枚目のペーパーコア用シートのうち1本置きの折目4を第3枚目のペーパーコア用シートの糊代部5側の折目4に対して糊代部5の幅の分だけ一側かつ平行に位置をずらして第4枚目のペーパーコア用シートの裏面を第3枚目のペーパーコア用シートの糊代部5に接着する。

以上で四段のコアを有する芯材が得られるが必要により第5枚目以下のペーパーコア用シートをその下方に位置するペーパーコア用シートに接着する。この場合ペーパーコア用シートの幅を予めに使用時に備えて一定の幅に設けておけば必らずしも必要とする工程ではないが、製造上の便宜上幅1mのシートを多数枚接着させた後幅20mm(使用時には20mmの高さとなる)の芯材を得る場合は、接着させた多数枚のペーパーコア用シートを20mmの幅によりペーパーコア用シートの折目4と直角方向に第3図矢印の示す様に切断することにより20mm幅の方形素材が得られるのである.

尚、上記の工程においてシートの折目4と折目4を糊代部5の幅だけずらせて接着するには、第1枚目のペーパーコア用シートに対して第2枚目のペーパーコア用シートを裏返して引揃えた上接着しさえすればよい.

要するに本考案は、紙質等の適宜材質より成る単体の素材を連続する山形に形成せしめ、かかる単体の素材を平行に左右位置をずらせて一辺にて溶接あるいは接着して成る方形素材において、各単体1の折目4にはミシン穴を多数設けたので、各折目において内側と外側に交互に切断部を形成せしめるものに比し折目4の形成が著しく容易であると共に各折目4において内側、外側いずれにも自在に折曲出来、又一本置きの折目4の一側に任意の一定幅を有する糊代部5を形成すると共に各単体1を該糊代部5の幅だけずらして接着したので、各単体1の斜辺3における相互の接着面積を自在に調節出来、これにより方形素材の用途に適応した強度性を自在に具有せしめるのが出来、又方形素材の空間部には保温剤を充填せしめたの5で、耐荷、緩衝効果に加えて保温効果をも図らしめることが出来る等その実用的効果甚だ大なるものである。

図面の簡単な説明

図は本考案実施の一例を示すものにして、第1図は本考案に係る方形素材の正面図、第2図はペーパーコア用シートの正面図、第3図は4枚のペーパーコア用シートを接着させ、谷ペーパーコア用シートの一部を破断して示す正面図、第4図は従来例を示す正面図、第5図は 、ドア等に方形素材を使用した場合の断面図である。

1……単体、2……山部、3……斜辺、4……折目、5……糊代部.

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

別紙

イ号物件目録

細長い段ボール紙よりなる複数の素材単片の表裏面に交互に所定幅のスリットが形成されており、前記素材単片は前記スリットに沿って形成されたのり付け部において互いに部分的に接合されているとともに、前記スリット部が折り曲げ部の山部となるように折り曲げられることによって、全体がハニカム状に一体化されていることを特徴とする段ボール芯材。

別紙

ロ号製法目録

(1) 一定の横幅(a)を有する段ボール紙よりなる原紙の一方の表裏面に交互に所定幅(b)の間隔でスリットを形成し、表裏の奇数(c)列の断続的スリットと幅狭の端部を形成する工程と、

(2) 前記段ボール横幅(a)に一のスリット幅(b)を加えた間隔をもって両側に設けられた左右の原紙ガイドを有する紙送りテーブルと、前記ガイド前方に配されていて、両側に幅狭端部のためののり付けローラが設けられ、内側には前記スリット幅の二倍の間隔で前記スリットに沿ってのり付けするローラが配されてなるのり付け機とからなるのり付け装置に、前記スリットを形成した原紙を、原紙の前後を交互に変えるとともに、交互に左右のガイドに案内させて送り込んでのり付けする工程と、

(3) 前記のり付けした複数の原紙を合着してのり付け面に接着する工程と、

(4) 前記合着したスリットと直角方向に切断する工程

(5) とからなることを特徴とする段ボール芯材の製造方法。

図面

(イ号物件、ロ号製法共通)

【図面の説明】

第一図は、イ号物件である段ボール芯材の斜視図、

第二図は、その部分拡大斜視図、

第三図は、段ボール原紙の平面図、

第四図は、のり付け工程を表わす、原紙の一部を切欠いた平面図、

第五図は、のり付けした段ボール芯材の分解正面図である。

【符号の説明】

10…板ボール芯材

11…折り曲げ部

20A、20B…段ボールシート

21a、21b…(段ボールシートの)板紙部

22…(段ボールシートの)波形部材

S…スリット

30(30A、30B)…段ボール原紙

30a…(段ボール原紙の)前端

30b…(段ボール原紙の)後端

30c、30d…(段ボール原紙の)側端部

32(32A、32B)…幅狭の端部

S1…表面側のスリット

S2…裏面側のスリット

40…のり付け装置

42…紙送りテーブル

45A…右側原紙ガイド

45B…左側原紙ガイド

46…のり付け機

47a、47b…幅狭端部のためののり付けローラ

48a、48b…スリットのり付けローラ

49…シャフト

50…のり付け部

51…のり

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第5図

<省略>

第4図

<省略>

特許公報

<省略>

<省略>

実用新案公報

<省略>

<省略>

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